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偶然

辞書を引いたら(music)の前に(mushroom)があった。
    ---ジョン・ケージ





「United States Lines Paris Review」の一九四五年の号は、ユーモアを特集した。ケージはそこに、音楽についてなにか書くように依頼された。これは、彼がそのために書いた文章である。

「音楽愛好家の野外採集の友」Music Lovers’ Field Companion



 人が茸に熱中することによって、音楽についての多くを学ぶことができる。私はそういう結論に達した。その目的のために、私は最近田舎に引っ越したのだ。そして、菌類の「野外採集の友」の熟読に多くの時間を費やしている。そういう本は、よく古本屋で半額で見付かるのだが、そんな古本屋はごく稀に、ページの端が捲れてしまった楽譜を売る店の隣にあったりする。そんなときには、私のしていることが正しいという動かぬ証拠を見た思いに心浮き立つ。

 冬は、茸にとって、音楽にとってと同じく、悲しい季節だ。温度と湿度が一定に保たれる洞穴や家の中だけで、そして、財政と切符の売れ行きの安定が監視されるコンサート・ホールの中だけで、通俗的で誰にでも受け容れられるようなものが繁茂する。アメリカの商業主義は、原茸の味をまったく台無しにしてしまい、それを輸出してヨーロッパの市場にまで影響を与えた。うるさい食通達が、店に並んだ茸を見ても買いはしないように、生気に満ちた音楽家は、折々にコンサートの通知を目にしても、静かに家に留まる。もし、榎茸が一月に旺盛に生えて、それはまれなことだが、森の散歩の最中に偶々それに出会ったとしたら、まったく夢のようにすばらしいが、それとちょうど同じように、ニューヨークで、鋭敏な耳の人々にだけ判かる音楽をやる冬のコンサートに集まる人々が増えているのはまったくすばらしいことだ。(1954年:人口12,000,000人中、129人。1955年:人口12,000,000人中、136人)。

 夏には様子は違う。三千種ほどの様々な茸が豊かに繁茂する。そして、右も左も現代音楽祭だらけ。しかし、最近流行のシェーンベルクやストラヴィンスキーの諸成果の統合が、唯ひとつの新しい茸も生まなかったことを考えると、残念に思う。菌類学者は、現在あるような菌類の繁栄には、危険な天狗茸が非常に大きな役割を果たしていることに気付いている。プログラムを決める人達や、一般の音楽愛好家は、この暑い季節の到来に、何か
しら用心深くなりはしないか?

 去年の夏は楽しかった。(引き伸ばされた暑い季節、即ち、ドナウエッシンゲン)のために、私はパリのボートレイー通りに住む友人の作曲家ピエール・ブーレーズを再訪問しただけでなく、ビュフェン通りの茸展を見ることもできたのだから。一週間後ケルンで、ガラス張りの調整室の特等席から見ていた私は、聴衆が、言ってみれば何の遠慮もなく、居眠りしているのに気付いた。スピーカーからはエレクトロニッシェ・ムジーク(電子音楽)が演奏されていたのに。私は、パリのビュフォン通りにあったもうひとつのスピーカーのことを思わずにはいられなかった。死の危険がある毒茸とその見分け方についての話を各時間毎に流していたそのスピーカーに、人々は真剣に聞き耳を立てていた。

 しかし、現代の音楽の状況についてはもう十分だろう。それはよく知られているのだから。もっと重要なのは、現代の茸が直面している問題が何なのかをはっきりさせることだ。まず手始めに、どの音がどの茸の生育を促すかを明らかにすることを提案する。茸は茸自身音をだすかどうか。或る種の茸の菌褶は、適当に小さな羽を持つ昆虫がそれをピッチカートするのに使えるかどうか。山鳥茸の軸は、小さな虫は這入ったとき管楽器になるかどうか。その胞子は、まったく色々な大きさと形をしていて、まったく数えきれないほど沢山だが、大地に落ちたとき、ガムラン音楽のような響きがしないかどうか。そして最後に、微小なものとして存在しているにちがいないと私が思っている子のすべての生き生きとしたものが、電子工学の助けにいよって増幅され拡大されて劇場に持ち込まれ、私達の楽しみをもっと興味深くすることができないかどうか。

 もし、食事中、ベートーヴェンの『弦楽四重奏曲何々番』のレコードをかければ、それが紅天狗茸の科学性質を変え、消化し易く美味しくすることが判れば、レコード業界(これはアメリカ第六の産業だ)へのすばらしく大きな恵みになるだろう。

 猿の腰掛のような茸と音楽の女神と結合させてしまったからといって、私が不真面目で軽率で、悪く言えば「ごたまぜ趣味」だ、と思われないために、作曲家はいつも音楽を他の何かと混ぜ合わせているのだということを考えて欲しい。カールハインツ・シュトックハウゼンは明らかに、音楽と曲芸手妻とに興味があって、曲芸の玉投げをするときだけに役立つような「綜括約構造」を作り上げているし、その一方、私の友達ピエール・ブーレーズはと言えば、彼の最近の論文で判るように、音楽と括弧とイタリック体で書いた言葉とに興味があることは明らかだ。このような興味の組み合わせは、私には法外な数に思える。私自身が択んだ茸の方が、私は好きだし、それに、それはもっと前衛的だ。
 
 森の中で、私の沈黙の曲の演奏を指揮して、私は多くの楽しい時を過ごした。聴衆はたったひとり私自身だけだから、その曲は私が出版した一般に知らされている長さよりずっと長い。つまり一種の編曲版であある。或る演奏のとき、私は或る茸を見分けることで第一楽章を送った。その茸は、首尾よく見分けられないまま居果したのだったけれど。そして、第二楽章はまったくドラマティックだった。それは、私が指揮台にしていた岩から10フィート以内のところまで跳び上がってきた雄鹿と雌鹿の音で始まった。この楽章の表現性は、ドラマティックであったあばかりでなく、私の見方から言えば、とても悲しいものだった。なぜなら、その動物達は、単に私が人間であるというだけの理由で怯えてしまったのだから。しかし、彼等は、ちょうどその曲の構造にぴったりに、楽章の終わりに躊躇いがちに去った。第三楽章は、第一楽章のテーマに還った。しかしそこには、A-B-Aという形に於いてドイツ的伝統に関連しているすべての深奥な、とてもよく知られている変化、つまり世界の変化の情緒が含まれていた。

 残された紙面で、私は高強調したい。私は、音と音との関係に興味がないのと同じように、音と茸との間の関係にもそれ以上の興味はない。そうした関係というのは、この世界では場違いなばかりか、時間の浪費でもあるような論理の導入に深く関わってしまうことになる。私達は、私達が極めて真剣で熱心であることを求められる状況の内に存在している。私はそれを、身をもって示すことができる。つまり、私は最近、一般には座禅草として知られているスパティエマ・フェエティダを試しに料理し食べた後、病院に運ばれた。血圧は50まで降下し、胃は洗滌される、といった次第である。つまりそれ故に、私達は、ひとつひとつのものを直接に、それが在るがままに見極めねばならない。ブリキ製のホイッスルの音であっても、優雅な傘茸であっても。 




ジョン・ケージ著作選
小沼純一 編    筑摩書房より




打つのが大変だった。。。
ゆっくり読んでいってね!





ジョン・ケージ著作選 (ちくま学芸文庫)ジョン・ケージ著作選 (ちくま学芸文庫)
(2009/05/11)
ジョン ケージ

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